6月14日 桧枝岐川釣行

 今年の初遠征は、たき火&フィッシング。桧枝岐のキャンプ場が良い

タックル
タックルとキャンプ道具を満載して目指すは遥か桧枝岐村です。仕事疲れなどどこ吹く風だね

13日の金曜日 午後9時近くに仕事を終えて帰宅しました。釣りに行くことは決めていた。目的地は福島の西南端の桧枝岐村、同じ県内とはいえ僕の家からは片道200km弱、天気は良さそうだが川の状況が分からない。キリンテのかわばたキャンプ場のおばちゃんに電話して川の様子を聞いた。「もしもし、川の水量はどう?」「あー!もう雪代も落ちたし、釣り人もいっぱいだよ。みんな結構釣ってるよ。昨日放流したらしいから・・。早く来なよ」「昨日、放流した?」「・・・・」後で分かりますが実はこれが曲者なのです。とにかく釣りは出来そう、キャンプ道具と釣り支度を調えて家を出たのが22:30頃、明日の夜明け前には桧枝岐村に着くだろうから明日は釣り三昧、そしてキャンプで焚き火、イワナ達と幸せな週末を過ごすのだ。今回はロッドを5本準備しました。すべての竿に魚を釣らせてやりたい、僕の頭の中ではそれぞれのフィッシングシーンが描かれているのでした。深夜営業のスーパーに立ち寄り2日分の食料を調達、今回はメタボ対策もあり(笑)割と地味なキャンプになりそう。もっとも一人きりの遠征だから料理に無駄な時間を費やすつもりは無いのだけれど。もう時間も遅いし、一般道の山道を走るのも嫌なので東北道路を南下し塩原温泉経由で会津に入ることにしました。

構遠回りになるけれど、なんとなく高速道路は安心する。塩原温泉を抜け尾頭トンネルを抜けると上三依にて鬼怒川方面と会津方面の分岐に当る。右に進路をとると南会津への一本道、国道400号と121号と352号の重複国道はさすがにこの時間になると走行車も少ないかと思いきや、結構大型トラックが走っているではありませんか。上り坂、30kmのスピードに閉口しながらも山王峠を越えるとやっと南会津、国道352号(舘岩村方面)と121号(南会津町方面)の分岐に出ました。この交差点を左折、中山峠を越えて舘岩村に入り桧枝岐村へと向います。ここから更に約50kmの行程です今回は、ちょっと寄り道をする予定です。名だたる名河川の鱒沢川、舘岩川には目もくれず(目をやっても真っ暗で何も見えないけれど(^^;)ひたすら桧枝岐村に沿いに下流に向かって走ります。いつもならこのまま伊南川に出るのですが今夜は途中で左に入り西根川沿いに山越えルートで桧枝岐に入る予定です。ご存知の方も多いでしょう木賊温泉の川原の露天風呂が本日の第一目標です。

木賊温泉
深夜2時、舘岩村の木賊温泉に立ち寄った。脇を流れる西根川の水量は多い

賊温泉は西根川沿いに湧く源泉100%の単純硫黄泉で、西根川のすぐ脇に足元の盤の間から45度の源泉がプクプクと沸いていて24時間入浴できる貴重な露天風呂があります。何度かの大水でその度に埋まってしまい、今は脱衣場の床がコンクリートで補強され川との境を作っています。その昔、大石だけが川との境だったころが素敵だったんだけどなあ・・。風呂の中から泳ぐイワナが見えたっけ。神経痛・切り傷・火傷に効能があり腰痛持ちの僕にはとても嬉しい温泉なのでした。到着は午前2時、こんな深夜に入っているのは可愛いお姉さんぐらいでしょう。ああ、恥ずかしい(^^;はやる心を抑えながら川原への階段を下るとなにやら人の声が・・。そっと覗くと、なんともむさ苦しい(失礼)山親父が5人も入ってるではありませんか。計画は大きく狂いましたが温泉に浸り幸せ一杯であります。「山ですか?」って聞くと「いや、山って言うほどじゃないんです。遊びです遊び。焚き火したり」と笑っていました。僕みたいな親父結構いるもんだねえ。すっかり温まった僕は暗い林道を超え、ついに目指す桧枝岐村に到着しました。

桧枝岐川
早朝、桧枝岐川に暗雲が立ち込める。はたして今日の釣りはどうなる

ニ尾瀬公園前の駐車場に車を停め朝までしばしの睡眠をとることにしました。いつもなら仲間と宴会が始まるところですが今夜は一人、缶ビールを一本頂きあっという間に眠りに落ちたのでした。すごい風の音で目を覚ましました。5時半、明るくなってきた空に蓋をするように灰色の雲がかかり木の枝が音をたてて右往左往しています。「ありゃりゃ、今日は天気良かったはずなのに・・・」寒くて寝袋から出られません、また一眠り・・。一時間後、外に出てみると相変わらずの風と寒さです。目の前のCR区間を覘いてみるとすでに3人もフライマンが入っています。「タフだなあ・・。」根性なしの僕は萎えそうになる心に一喝!「釣りに来たんだから、負けるんじゃねえ!」僕はキリンテのキャンプ場近くのポイントへ移動しました。「がんばって釣るべえ」力の無い声で低くつぶやき、フィッシングベストに手を通したとき。一台の車がスーッと停まった。明らかに釣り人の親父が二人降りてきて「今からですか?」と聞くので「ええ」と答えた。するとこの親父は「ここに昨日放流したって聞いたんだよなあ・・」と言いながらあっちに行ったりこっちに行ったり藪に入っていったり・・。「おいおい、今僕がここから入ろうと思ってんだぞ!」って喉から声が出そうでしたが、知らん振りして準備をしていると、「おかしい、魚がいないぞ」と相方に言ったかと思うと車に戻りさっさと走り去って行ったのでした。「なんだったんだ・・・」すっかり出鼻を挫かれやる気が半減した僕は川に下りても調子が上がりません(^^;それでも「釣りに来たんだ!釣り三昧だ!」という声に背中を押されキャストを始めるのだけれどやっぱりすごい風、風の合間を狙いラインをのばして行きます。それにしても寒い、あっという間に指が凍えて来ました。水温を計ると8.8℃、なんとも厳しい状況です。ここは水深があるのでイワナも底石にへばりついていて水面には目もくれません。

方ないので、水深の浅いCR区間に移動することにしました。浅い流れなら水温が上がるのも速いでしょうから。すでにフライマン数は6人に増加。僕はミニ尾瀬公園に渡る橋の少し下流に下ったところから釣り始めることにしました。すでに先行者の足跡もあり、あまり釣果も期待できないかも知れないけれどここで頑張るしか手は無いので心を据えて支度に取り掛かります。今日のロッドはウォルトンパウエルの#4。ゆったり釣りをするのに最高のロッドです。ティペットは7X、その先に得意のスルーライトダンのホワイトを結びました。シロハラコカゲロウのイメージです。まずは、それなりのポイントにイワナを探します。流心脇、大石の周り、本当なら付いているだろう場所からは案の定反応がありません。ここのイワナは普段から釣り人に責められ続けているのでそんな所にはいないのです。いたとしても小さなやつばかりだから、狙うポイントを変えることにしましょう。岸沿いの浅い小さな流れのちょっとだけ石が入っていてやっと隠れられるような場所に彼らは潜んでいます。まんまと僕を騙したと思っているのでしょうがそうは問屋が卸しません(笑)

イワナ イワナ イワナ

CR区間のイワナ達、年を越しただろう鰭ピンのイワナと成魚放流されたばかりの鰭無しイワナが同居中。出来るなら綺麗なイワナを釣りたいところだが

と戦いながらの苦しいキャストにゆっくり反転した魚が見えました。ロッドに伝わるグングンという引きが悴んだ指の痛みを忘れさせてくれました。

Powellロッドとイワナ
Powellのバンブーロッドと桧枝岐のイワナ

上がったのは23cm程の丸々太ったイワナです。昨日、放流したと聞いていたので、鰭の無い成魚放流のイワナが釣れるのではと心配していたのですが意に反して鰭の尖ったナイスプロポーションのイワナ、底石と同じオレンジ色のお腹がとても色っぽいイワナでした。さっきまでの萎えた心はどこへやら、俄然元気が出てきました。風の隙間を狙ってキャストするとコポンという音を立ててゆっくり反転しました。こんなに臆病なのにこんなに大らかにフライを咥えるのですからちょっとばかり可笑しくなってしまいます。28cmを頭に大小取り混ぜて二桁になりました。予想に反して成魚放流の鰭なしイワナは一尾も姿を見せず釣れたのはみな鰭ピンの綺麗なイワナでした。地元の人は天然イワナと呼んでいますが、実は稚魚放流されたものが大きく育ったイワナです。残念ながらこの区間は産卵できるような場所は無いのです。とにかく朝の落ち込みようとはまるで別人、この辺でいったん切り上げてキャンプ場に向かうことにしました。

キャンプ場
いつもの桧枝岐の宿は「かわばたキャンプ場」元気の良いおばちゃんが迎えてくれます。自分の好きな場所にテントを張れるのも有難い

つものキャンプ場は、話し好きのおばちゃんと働き者のご主人が切り盛りしているかわばたキャンプ場、キャンプ場の近くまで来ると遠くにおばちゃんが見えました。遠くから見ても元気なのがわかります(笑)「おーい!」手を振りながらキャンプ場に車を入れるとすぐさま走ってきて「おーい!久しぶり元気だったかい!」から話が始まります。とことん付き合っているとあっという間に日が暮れてしまうのでそこそこにテントを張ることにしました。まだ昼前だけどチェックインの時間なんて関係ありません。スペースも空いていれば自由に使わせてくれます。本当に良いキャンプ場です。FFこみゅでコマーシャルしているので釣り客が増えたことでしょう(笑)今日は僕の他に3人連れの餌釣りさんと3週連続で千葉から来ているというフライマンが一人そしそのほか2組のアベックさんぐらいでテン場はガラガラ、いくらいびきをかいても叱られません(^^)テントとタープを設営してテーブルをセッティングし朝食兼昼食をとりました。ソロということもありメニューは簡単、ジャガイモのポタージュに高菜と明太子のチャーハンそれと胡瓜と茄子の浅漬けです。いつもなら本気で料理を始めるところだけどメタボ対策もあり質素に質素にです(笑)夜のためにランタンをセットし終えたらしばらくお昼寝タイム。テントの中にもぐりこんでそのままぐっすり・・。幸せ・・。

後2時ごろに起き出し、朝、入った場所にもう一度入ってみました。餌釣りのおじさんが入っていたので邪魔をしないようにそーっと上流へ移動、橋の下の大きなプールの流れ出しの下の落ち込みに大きな岩が顔を出しています。いかにもと言うポイントですがそっとフライを落とすと大岩に体をこすり付けるように出てフライを咥えました。本当にお決まりのポイントからお決まりの出方で、こういうのもまた嬉しいものですね。上流はいまいちポイントが絞り込めず2尾を加えてキャンプに戻りました。相変わらず鰭ピンの綺麗なイワナでした。午後になってもキャンプ場に旦那さんの姿が見えません「おばちゃん、旦那さんは仕事?」って聞くと「そう、燧の湯」村の公衆浴場の燧の湯は数年前(もうずいぶん経つか?)に立て替えられちょっとした日帰り温泉施設みたいに綺麗になりました。いつも釣りに来たときは必ず寄らせて頂いています。「じゃ、風呂に行って来るよ」「いってらっしゃい」と見送られ燧の湯に向かいました。

り口の戸をガラガラって開けると「いらっしゃいませ!」って言う人懐こい優しい声が聞こえてくる。働き者の旦那さんがここに居るのだ。「どうも、しばらくです。今晩泊めてもらいますよ」「どうもどうも、ゆっくりして行ってください」ゆったりとお湯につかりここの処の溜まったストレスや何やらを流してしまおう。ほのかに硫黄の匂いがする単純硫黄泉は疲れた体にゆっくりと染み渡って来ますすっかりリラックスした僕は少し村を散歩してみることにしました。仲間たちと釣りに来るとなかなか釣り以外のことには目が行かないので一人の今日は久々のチャンス。何年かぶりに村の中を歩いて見ることにしました。有名な六地蔵も久しぶりにしみじみと見てみると右から3番目の地蔵さんが横目でこちらを見てほくそえんでいます(^^;実はこの六地蔵には悲しい話があるのをご存知でしょうか。桧枝岐村は、平家の落人の村と言われ、村内には『星』、『橘』、『平野』の3つの姓しか無く日本有数の「特別豪雪地帯」です。昔から冷害になやまされ 特に凶作の年は餓死年と言い、多くの餓死者を出したことがり、働けるものだけが生き残るため「まびき」という悲惨な行為があったそうです。この六地蔵はその霊を慰め、母親たちの魂を鎮めるために建てられた稚児像だと言われています。それにしてもここの六地蔵はいつも綺麗な衣を身にまとって綺麗な花が絶えることがありません。この村の人たちの信仰の深さを物語っているようです。

六地蔵 板倉

六地蔵

セイロウ造りの板倉

地蔵から程なく木造の古い建物があります。セイロウ造りの「板倉」と呼ばれるもので火事から大切な穀物を守るために家から離れた畑の中に立てられた穀物倉庫だそうで、桧枝岐には粘土が無いため木造で造られたのだそうです。約10センチほどの厚い板をセイロウのよう組み合わせて作るもので釘が一本も使われおらず、正倉院と同じ建築様式であり建築史上も重要なものだと言われています。もう少し歩いて行くと小さな路地があり、何本もの幟が立っている歌舞伎通りが見えます。その昔、土地のものが伊勢神宮へ参拝したおり、江戸で檜舞台の歌舞伎を観劇し、見よう見まねで村に伝えたのがはじまりと言われています。 以来260年以上に渡り、父から子、子から孫へと継承されてきました。春(5月12日)と秋(8月18日)の鎮守の祭りに奉納歌舞伎として行なわれてきた檜枝岐歌舞伎は県指定の重要無形民俗文化財に、歌舞伎の舞台は国指定重要有形文化財に指定されています。この歌舞伎舞台の入り口近くに「橋場のばんば」が鎮座して居ます。古来より、子供を水難から守ってくれる水神様でしたが、縁結びと縁切りの神様としても信仰を集めています。病気やいじめ、悪い仲間から縁を切りたい場合は新しい鋏を、良縁で切りたくない場合は錆びた鋏をお供えします。また、ばんばの頭にお椀の蓋を被せると、どんな願い事も叶えてくれると言われているので大漁祈願でもいかがでしょうか(笑)

歌舞伎通り 歌舞伎舞台 橋場のばんば

歌舞伎通り

歌舞伎小屋

橋場のばんば

Pezonとイワナ
ペゾンのバンブーロッド、スーパーマーベルと桧枝岐の鰭無しイワナ。ちょっとだけ微妙

てさて、そろそろイブニングの時間が近づいて参りました。ちょっとした旅人気分から釣り人に変身です。イブニングはCR区間に入りました。暗くなっても安心安全のこの区間、ビギナーの方には打って付けでしょう。イブニング用にはペゾンのスーパーマーベルに#5ラインのセッティング。イブニングとは言え、さすがに入れ替わり立ち代りのフライ攻撃にさすがの桧枝岐イワナも渋くなって来ています。なかなか顔を出してくれません。ヤマメのようなすばやいアタックがあったりはっきりとフライを見切られたり一筋縄では行きません。本当に目を凝らしてみないと気づかないような石の脇のヨレにフライを流した時、良いサイズのイワナが反転しました。グンと引いたイワナは見た目にもグッドサイズです。ただ体色が白っぽい・・。ついにご対面です。今回初の成魚放流イワナ、胸鰭も尻鰭も尾鰭も見事にかけたイワナです。釣りたくなかった・・。それでも体長は29cmの泣き尺です。

焚き火
たき火も遠征の大きな楽しみ。これがしたくて遥か桧枝岐までやって来た

でも、重いだけ・・みたいな。この川は低い堰堤で区切られた川、堰堤下の流れを集めた深みにある大石に当たる流れにフライを乗せるドラグがかかってすぐに流れに飲まれてしまう。三投目、少し上流側に足場を移動したそのキャストに大石を舐めるように流れたフライを底から浮き上がって来たイワナが咥えました。してやったり、最高の気分です。釣りは難しい程楽しいし、それを攻略した時の喜びはひとしおです。結局、イブニングは目立ったライズも無く3尾釣った所で終了。

食を簡単に済ませていよいよ焚き火の時間です。久しぶりのキャンプ&フィッシング、最大の楽しみは焚き火を眺めながらのウィスキー。至福のひと時です。星空が綺麗、北極星と北斗七星がすぐ目の前に手が届きそう。星空に溶け込んで行きそうな錯覚に陥ります。それにしても寒い、焚き火していても身体はまったく暖まりませんフリースのブランケットを頭からかぶり寒さをしのぐが限界。さっさとテントに入りシュラフに潜り込んだ。明日は早起きしよう。