8月1 舟岐川釣行

 桧枝岐川支流で綺麗なイワナを釣りたい。

前2時ごろ携帯の着信音が鳴った、寝ぼけ眼で出てみると会社からのトラブルの電話だ。なんやかんやと3時過ぎまで対応してやっと電話を切った。結局眠れなくなってテントを這い出し、消えた焚火に火を着けた。携帯電話なんて物を誰が考え出したんだ、しかもここは桧枝岐だぞ。日頃は電波が通じなくて文句を言うのだが今日は違う。休みの日に世間から離れるためにこんな遠くまで来たのにこんな時間に呼び出しなんてどう考えてもあり得ない。「携帯電話なんぞが出来てからと言うもの、僕の健全な精神がどれほど傷つけられたことか、しかも各社こぞって電波の不感地帯を無くそうなどと悪魔の所業としか思えない」「我々は、人類が発明した文明の利器によって、やがて文明と人類は滅びるのだと言うことに一刻も早く気付くべきなのだ」焚火を見つめながら僕はにわか哲学者になったのだった。

舟岐川
朝靄に霞む舟岐川。この小さなポイントひとつひとつにイワナが付いている。

もだんだん白んで来た。僕はタックルの準備を済ませると静かに車に乗り込みエンジンをかけた。昨日賑やかだった団体さんはすでにキャンプを撤収していた。今頃尾瀬沼に向かっているのだろうか。僕は予定通り支流の舟岐川に向かった。いつも僕が入る場所、それほど大物が居るわけでは無いがポイントを選べばそれなりに答えてくれるはずだ。 川に入る途中の小さな沢にの数匹の稚魚を発見した。2cm程の小さな稚魚は僕の大きな影に怯え逃げ惑っている。「驚かしてすまん、早く大きく育てよ。」この時期の稚魚は自然産卵のものなのか、最近は鰭の丸いイワナを何匹も見ているだけに少し嬉しくなってきた。

イワナ
本流のイワナとはちょっとだけ違う。この鰭の立派さはどうだ。

きな開きの流れのポイントをあちこち探るが全く反応が無い。「あら、間違えたか?ここで出ないと後が厳しいかも・・・」睡眠不足もあってちょっと心が折れそうな感じだが、諦めてはいけない。小さなポイントが段々畑の様になっている場所にフライを落とすと尻の所でもんどりうってフライを咥えた。22cm位か、鰭の張った綺麗なイワナだ、本当に小さな石の蔭にイワナが入っている。その後も小さなポイントを丁寧に探って行くとサイズはあまり大きくは無いけれどないが数は二桁を超えた。ここまでまだ100mも釣り上がってはいないから何とも効率の良い釣りだ。まあ、たまにはこんな日もあって良いだろう。

木の枝の下がポイント
木の枝の下にタイトにフライを打ち込むと静かに浮かんで来て何の疑いもなくフライを咥えた

岸のちょっとだけ深そうな流れは、上から木の枝が張り出してちょうど良い日陰を作っている、見るからにイワナが入って居そうなポイントだ。木の枝と水面までのわずかな隙間に少し上流側からアンダーハンドキャストで木の枝の下にフライを入れ、少しだけオーバーターンさせた後、上流側にフリップをしてフライ先行で流してやる。一投目でうまくラインに乗った、これで計算どおりイワナが出てくれれば満点だ。パシッと飛沫が上がってフライングアントを咥えたイワナがジャンプした。計算通り100点満点の釣り、いつもこのように上手く釣れてくれれば何の文句も無いのだがそこは釣り、そうそう上手くいかないから面白いのだ。

イワナ
ブッシュの下から浮いてきてフライを咥えた。グラマーな一尾。

のポイントのすぐ上にある大場所のプールの中央に3尾程のイワナが群れていた。「よしよし、待ってろよ」一投目で狙ったポイントにフライは運ばれて行く。一番右に居たイワナが動き反転してフライを咥えた、「よし」絶妙なタイミングのはずだったが、グンというショックを残しフライは宙に舞った。姿が見える分早合わせになったか、大失敗だ。もうそこにイワナの影は無い、フックを咥えたからにはもう出ないだろうが念のためにもうひと流し、やはり全く反応はないがさらにもうひと流し、すると流したラインのから1m程左の沈み石の蔭からまるでロケットのように飛び出してきたイワナがフライを咥えた。いやあ、やるもんだねえ、なにか急に釣りが上手くなったような気分だ(笑)

イワナ
綺麗なイワナが次々とフライに出る。たまにはこんな日があっても良いだろう。

その後、数匹のイワナと遊んだが、睡眠不足もたたって足が重くなって来た。僕は早々に川から上がってキャンプに戻った。かわばたキャンプ場の常連のみなさんと小一時間のお茶タイムを過ごし、キャンプを撤収。時間は少し早いけれど帰宅することにした。