3月2日 那珂川釣行

 そう言うこともあるさ、釣りだもの…

毎回、必ず忘れ物をするので、今回は前夜に持っていくものをリビングに並べてから寝た。これなら忘れ物が無いか一目瞭然!の筈だったが…
いものであちこちで今シーズンスタートの声が聞こえて来ました。福島県の解禁は4月なのでもう少し待たなければなりませんが、お隣の栃木県の一部の河川は昨日3月1日に解禁になりました。何時からだろう、栃木の解禁はこぼくらの恒例行事となっていて、このお祭りを以てプレシーズンが始まります。4月のシーズンインに向けてモチベーションをアゲアゲして行く重要な期間がこの一か月なのです。

朝5時きっかりに弟が我が家に到着。僕の解禁前夜は何時も何故か忙しくて出発直前にバタバタと準備をしだすというのが通年で、川に着いてから「あ、リール忘れた!」「釣り竿忘れた!」と必ずなるので弟の到着が年々早くなると言う始末なのです。

前夜が忙しいのはやはり例年通りで、昨夜は大先輩たちとの飲み会で玄関ドアを開ける頃には程々良い気分に出来上がっておりました。また、今年もか、しかし今年は違います細かい事はさておき、釣り道具をリビングに集めることにしました。ロッド、リール、ベスト、ウェーダー、シューズ、着替え等々、荷物は一山になりましたがなるほどこれなら一目瞭然、続きは朝目覚めてからにしよう。

毎回必ず忘れ物をするので、今回は夜中に持っていくものをリビングに並べてから寝た。これなら忘れ物が無いか一目瞭然!の筈だったが…

北自動車道をひたすら南下する、那須高原SAのスマートICで降りるはずだったのに気づいたら目の前に黒磯PAの案内標識が現れた、「えっ!何?なんで?那須高原SAは何処にいった!?」と言う僕に「さっき、通り過ぎたろ!」と弟が冷たく答えた。チコちゃんの「ボーっと走ってんじゃねえよ!」って声が聞こた。

黒磯板室ICを降りて、突き当りの県道53号線交差点をを左折し、やがて県道369号をを那須方面へ向かう。因みに板室ICから県道53号線交差点までの2kmの区間が県道351号線となっている。2kmしかない県道にびっくりしたものだが、広島県呉市内にある広島県道204号はなんと10.5mしかないらしい、上には上があるものだ。

おおっと脱線してしまった、話を元に戻そう。県道30号線出合いのセブンイレブンで遊漁券とお昼を購入して一路板室温泉へと車を走らせる。今日の釣り場は那珂川上流の板室温泉前である、まあ、お祭りじゃなきゃ来ないだろう釣り場だが、年越しのヤマメやイワナがたまに釣れたりするし、コーヒータイムに適当なベンチもあるので僕らの解禁専用ポイントなのである。

それにしても車のフロントガラス越しに見える山々にはほとんど雪が無い、遠く男鹿岳だけが白く輝いて見えた。昨年末から今年にかけては暖冬で降水量が極めて少なく、どこも渇水状態らしい。釣りもさることながら農家は大変だろうなあと言っていた某漁協の親父さんの話を思い出した。ただの釣り人の僕には夏の干上がった川の事しか思い浮かばない、農家の皆さんごめんなさい。

外は冷たい北風にさらされて予想以上に寒く、川には水が無い・・・

時前に川沿いの駐車場に着いた、外は思った以上に寒く防寒を兼ねてさっさと釣り支度を整えた。まだ川に入るには早いし近くの橋から川を眺めてみると想像していた通りの渇水で餌釣りの人たちも難儀しているようだ、ルアーマンも数人見かけたがトップウォーターじゃないと釣りにならないのではないかと思う位の水量である。

取りあえず川に入るのはもう少し後にするも、タックルの準備だけはしておこう、ロッドのガイドにラインを通し、さてラインをクリーニングしようと思いラインクリーナーが無いのに気づく、リーダーにパーフェクションループを作り余ったヒゲをカットしようとしてクリッパーを忘れたことに気づく。いやはや、いくら早めに準備しようが忘れるものは忘れるものだ。「なんで、いつも同じところに入れておかねえのよ!」と、僕を叱る厳しい弟も「あれ、リーダーが無い!忘れた!」と騒いでいる、どうやら忘れ物ってのは性格だけでは無く、歳って言うものも大きく影響してくるらしい。

外は冷たい北風にさらされて予想以上に寒く、川には水が無い・・・

そうこうしていたら、おそらくここの温泉施設のおじさんだろうが近づいてきて「ここは釣りの駐車場じゃないからそっちに置いて」と道路脇に停めるように言われた。ここは温泉施設「板室健康のゆグリーングリーン」専用の駐車場だったらしく、そんなことを知らない僕らはいつもここに車を停めていた。言われたとおりに道路脇のスペースに車を移動した。後に気づくのだが、移動した道路脇の柵には「この場所には駐車しないでください」との看板が取り付けてあった。どうやら釣り人は、川のこちら側には車を停めてはいけないらしい、川向うに市営駐車場が有るので行かれる方はそちらに駐車していただければよろしいかと。

「水が無くて釣りになんねえべ、昨日は凄い人だったけど」とおじさんが仰る通り今日は釣り人もそれほど多くない、せいぜい十数人くらいだろう。解禁日には放流魚狙いの多くの釣り人が釣り竿の砲列を作り、その日のうちに殆どの魚を釣り上げてしまうので、翌日になってのこのこ出かけて来るような輩のために残っている魚は居ないでのある。

ろそろ川に降りてみよう、これだけ水深の無いポイントを釣り人たちが上り下りしていたので、水面に出たくても出れないヤマメ達が石の下に隠れて居るのだろうが、カワウのごとき僕の目を以てしてもその姿を見る事は出来ません。緩い流れのプールの底をピョンピョンピョンピョンと跳ね回る15cm程のヤマメを見つけたのが唯一でした。それよりも虫の姿が全く見えません、例年なら雪塊を歩き回るクロカワゲラやら死んだように動かないコバエやら、温泉から湧きたつ湯気のようなユスリカの柱が見えるのだが、空中はおろか河原の石にも枯れた葦の葉にも全く姿が無いのです。時折吹き付ける冷たい風がどこかに攫って行ってしまったのかもしれません。お昼ぐらいになれば現れるでしょうか、まあ、気長に待つのも春先の釣りですからね。

虫が出るには未だ時間が早いので、コーヒーでも入れようと思ったら上流に行った弟がタイミング良く戻って来た。

それよりも何よりも、「俺は上流に行くから」と言って先に行った弟、50mほど先に居るじゃないですか、「おいおい!そんなところで頭ハネられたら俺釣るところが無いじゃねーか!」まあ、焦ったところでしようが無いので、戻ってコーヒーでも飲んで一休みすることにしましょう。土手のテーブルにロッドとベストを置いてガスコンロに火を付けた、お湯が沸くまでのちょっとの時間、散歩がてら餌釣りさん達の様子を眺めて来よう、居並ぶ釣り師達の竿先は皆一様に天を指したまま、まるで冷たい北風に凍り付いてしまったかのように一向に動こうとはしないのだった。

ベンチに戻り自分の分だけ豆を挽きコーヒーを入れようとしていたら下の河原をお弟が歩いて来た。何てタイミングの良い男なのだろうか、もう一人分豆を挽き足しフレンチプレスに入れ寒風の中でお湯が沸くのを待つ、春先のこの時間も祭りの一興なのである。戻った弟に「釣れたか?」と聞くと「一匹釣って三匹バラし」との答え、「な、なんだとお!おれの頭をハネてかあ!」と言いたくなるのをじっとこらえ、口元をヒクヒクさせながらコーヒーを入れやった、何て優しい兄なんだろう。そんなこんなで時間は過ぎ、お昼も済ませて再び川に立つ。今度は僕が上流に、弟が下流に入る。

虫が出るには未だ時間が早いので、コーヒーでも入れようと思ったら上流に行った弟がタイミング良く戻って来た。

そろそろだろうと辺りに目を配る、午後になれば虫が出るだろうと読んでいたのだ。しかし期待は見事に裏切られた、肝心の虫たちが出ることは無く、結局出たのは冷たい北風だけだった。 しかし、諦めるにはまだ時間が早いので、ラインを延ばしながら護岸を降りると30mほど先に上流から下って来た餌釣りさんを発見した。丁度川から上がるところだったのだろうか、僕の顔をみると唯一水深のあるポイントをバシャバシャ音を立てて横切るのだった。愕然とする僕をしり目に、対岸で待っていた奥様らしき人のもとへ。「お前なあ…」

いつもこの川のスタートはクロカワゲラかユスリカなのだが…

いつもこの川のスタートはクロカワゲラかユスリカなのだが…

憤りを抑え上流へと向かう、ここから上流は水が少ないながらも落ち込みや瀬が交互に現れる好ポイントが続くのでまあなんとか一匹ぐらいは釣れるだろうと高を括っていたのだが、先ほどの御仁が流れの中ををバシャバシャ歩いて来ていたとしたらその可能性は限りなく低くなったであろう。流れの脇、岸の際、大岩の縁、白泡の切れ目、案の定、何処を探っても反応が無い。この区間で出なけれは殆ど勝ち目は無いがもう少し釣り上がれば大きなプールが有る、そこを最終ポイントにして川を出ることに決めた。「良し!」気をとり直して上流に向かおうと目をやると、有ろうことか眼前に川を下る2人組の餌釣りさんが現れた。「いやあ、全然釣れないですよ、上流が良いって言われたんですが」と声を掛けられた僕は半ば声を詰まらせて「そう・・・ですね」と答えた。上流が良いよって言ったのは弟に違いない、さっき弟がそう言ってたもの。もう、絞りだす出すタメ息さえも残ってはいないが落胆するにはまだ早い、最後のプールが残っている、あそこなら少し時間を置けば可能性は有るかもしれない、そう思って急いで上流へ向かった。「おお!」思わず声が出た、そこには餌釣りのお兄さんがどっかり腰を下ろして咥えたばこで釣り竿を出していた。「そう言う事もあるさ、釣りだもの」

そう言うこともあるさ、釣りだもの…

そう言うこともあるさ、釣りだもの…

い足を引きずるように峠道を下った。春を待つ木々の芽や草の葉や温泉宿のちょっと傾いた街頭などに目を配せては、折れた心を和ます何か新しい大発見は無いものかと思いながら温泉街を下ったが、心の傷を埋めるほどの発見は何処にも無かった。車に戻るのに橋を渡る、その下で弟がラインを延ばしていた、僕の姿を見つけるとリールにラインを巻き取りながら川から上がって来た。そろそろ帰ろう、今年のお祭りはこれでおしまい。「釣れたか?」と弟に聞いた、「釣れたよそこで一匹、放流魚だけど」「ほー!そう言う事もあるわな!釣りだもの!」