Tips & Contrivances

魚と戯れるための様々なテクニックと小技がある

■Webキャスティングレッスン2

■unit1 座学1「ロングキャストを可能にするメカニズム」

ここでは、フライを遠投するためのメカニズムについて学習します。 それでは、遠投をするために必要な事柄をあげてみましょう。大きく次の2つのポイントについて解説します。『第四章 キャスティン グをパワーアップするべし』の復習でもあります。次の2つのポイントをこの講座の課題として取り組みます。

  1. 1.理想的なラインループ
  2. 2.ラインスピード
1.理想的なラインループ

遠くまでフライ(ライン)を飛ばす事を考えると、空気抵抗の影響をなるべく減らす事が必要になります。その為にラインループはナロ ーである事が重要になってくるのは周知のとおりです。更には直進性に優れ、弛みやスラックの無いストレートなラインコントローループ が必要になります。 それでは始めにラインループとコントロールについて解説しましょう。

A.ナローループの解説

ナローなループを作るためには『第三章 キャスティングを覚えなきゃ』で解説している通りティップアーチを小さくすれば良い事になります。そうは言っても実は結構難しい課題を抱えているのです。市販されているフライロッドは、そのテーパー形状やロッドアクションは様々で、それはそれぞれのロッドの持つ復元力や反発力はそれぞれによって大きく異なるため、理想的なループを形成するためには、それぞれのロッドに合ったロッドハンドの動きが必要になります。実はこれが一番大きな課題であり、ロッドハンドの動きによっては後述する運動エネルギーのロスに繋がるラインスラックなどが発生する要因にもなります。それらを解消しながらループコントロールするテクニックを身につけましょう。

まずループが出来るメカニズムから復習します<Fig1.参照>フォワードキャストを考えてみましょう。後方からフライラインを引っ張ってきたロッドティップはフォワードキャストの最後でロッドが停止すると、反発力により前方へ曲がります。この事によりティップアーチが生まれループが発生します。実際にはこれに加えてロッドハンドの動きがループの形を形成する事になります。ティップアーチ

理論上、ラインが地面と平行に直進するためには、キャスティング時のロッドティップの高さがほぼ一定である事が必要です。ここで注意して欲しいのは、ロッドティップの位置が同じ高さを通ると言う事は、ロッドグリップの移動は同じ高さを通る事は無いと言う事です。何故ならロッドは曲がるからです。たとえばロッドが一番曲がった時点でのグリップの位置は一番高い位置にあり、ロッドが真直ぐになった時点でのロッドグリップは一番低い位置に無ければならないからです。ベーシックキャストでロッドハンドが円運動をする必要があるのはその為です。ところで、ロッドティップが同じ高さを移動すると言う事は、例えばフォワードキャストを考えた時、後方から引かれて来たラインはロッドが停止するとロッドティップにぶつかってしまうと言う現象を引き起こします。それが新しい課題になります。それをクリアするには、ロッドが停止する時のロッドティップの位置を水平移動時の高さより低くしてやる必要が生じます。そのためにはロッド停止前に若干の円運動を入れるかリストダウンする事でティップアーチを作ってやる必要があります。このティップアーチが小さいほどナローループが発生する事は『第三章 キャスティングを覚えなきゃ』で解説した通りですが、ナローループを作ろうとすればするほど、ラインがロッドティップにぶつかるリスクが発生する事を理解しましょう。

それでは、ループ幅を狭くしながらラインがロッドに干渉する課題を解決する方法を考えてみましょう。check一番簡単で有効的な方法はラインがロッドティップの垂直上方を通らないようにする事です。キャスト時のロッドを僅かに外側に倒してラインがロッドティップの外側を通るようにする事で簡単に実現可能です。

B.ロッドアクションの解説

 ところで、理論上は上記の解説で問題無いのですが実際にはもっとややこしい話もあります。それは、ロッドの特性によるものです。ロッドにはそのロッド固有のアクションがありロッドの曲がる度合いが違うため、それぞれのロッドに合わせたロッドハンドの動きが必要になると言う事です。まずロッドアクションについて復習して見ましょう。ロッドアクションについてはその着眼点によって色々な呼び方があるためとても混乱しやすいものです。以下に、二つの着眼点による分類の仕方についてまとめたので参考にしてください。一つは、ライン負荷により曲がったロッドが真直ぐに戻る時間に着目した分類です。この復元速度(復元力)が実はキャスティングを考える上でとても重要なファクターなのです。もう一つは、ロッドの曲がり方(正確には曲がる中心部分)に着眼した分類です。最初の分類がロッドの性能を表すのに対しロッドの調子を表すとらえ方と言えるかもしれませんね。

☆復元速度によるロッドアクションの分類
アクション 特徴
ファーストアクション 復元力が強く、曲がったロッドが復元するスピードが速い。復元速度はロッドの曲がりが少ない程速く、ロッドの質量が少ないほど速くなるため一般にはティップ側が細いファーストテーパーのロッドに多い
ミディアムアクション ファーストとスローの中間のアクションをミディアムアクションと言うのだがその基準は極めて不明確なものだ(笑)
スローアクション 同じ材質なら大きく曲がるロッドほど復元するのに時間がかかる。ティップ部分の質量が多いスローテーパーのロッドはスローなアクションが多い。バンブーロッドはカーボンロッドに比べ質量が多いためカーボンに比べればスローアクションになる
☆ロッドの曲がり方によるロッドアクションの分類
アクション 特徴
ティップアクション ロッドのティップ部をから曲がるアクションのこと。復元速度の分類で言うところのファーストアクションのロッドは総じてティップアクションである
ミッドアクション ロッドのセンター部分を中心にカーブを描くロッドで上記同様にミディアムアクションのロッドに多い
バットアクション ロッドの根元部分から曲がるアクションを言うが、根元から曲がるということはキャスティング時のティップアークが大きな弧を描く結果になる。フライキャスティングに適したアクションとは言えない。

実は、ロッドアクションによるものではなく、ロッドのテーパーの形状による分類もあってこれらがロッドの分類を更にややこしくしているのです。

☆ロッドのテーパー形状による分類
テーパー 特徴
ファーストテーパー ロッドのバット部分とティップ部分の太さの比率が大きい(バット部の太さが同じであればティップ部が細い)テーパーがきついロッドの事
ナローテーパー ロッドのバット部分とティップ部の太さの比率が小さい(バット部の太さが同じであればティップ部が太い)緩やかなテーパーのロッド

ここでは、キャスティングの技術を学ぶことから、ロッドアクションについては最初に話をした『復元速度による分類』を使用します。早速、ロッドアクションによるキャスティングにおけるメリット・デメリットとそれぞれの特徴を生かしたキャスティング方法についてまとめておきます。

☆ロッドアクション毎のメリット・デメリット
ロッドアクション メリット デメリット
ファーストアクション ロッドの移動に対しティップ部の高低差が少なくなるためナローなループが作りやすく、ラインスピードも速くできるため遠投に向いている ワイドループが作りにくいので実際の釣りにおいては静かなプレゼンテーションがし難いとか、キャスティング時のトラブルが起きやすい
スローアクション 緩やかなベンディングカーブを作るためロッドの移動に対しティップ部の高低差が大きくなるためワイドループが発生し易くなります。静かなプレゼンテーションをするのに最適で、ロッドをゆっくり振る事が出来るのでアキュラシーの精度を上げるのには特に向いている ナローループを作り遠投するためには複雑なリストワークを身につける必要がある。ただしこれは遠投できないと言う事ではなく。テクニックを駆使すればタイトループ、ワイドループを使い分けることで楽しい釣りが出来ると言うメリットにも成り得る
☆ロッドアクションによるキャスティングの違い
ロッドアクション キャスティングの留意点
ファーストアクション 復元速度が速いのでロッドハンドの円運動(ティップアーク)が大きくなるとティップが弧を描いてしまう。リストダウンを速めにすることでロッドのストロークを短くすると良い。ただしティップアーチが小さくなるとラインがロッドティップに当たるなどのトラブルが多くなるのでラインの飛行軌道をロッドティップからずらしてやるなどの工夫が必要
スローアクション ロッドが真直ぐな時と、最大に曲がった時のティップ部の高低差が大きくなるためグリップの円運動を大きくしてやる必要がある。復元速度も遅いのでストロークを長くする必要がある。それにはリストダウンのタイミングを遅らせてやる(ロッド停止の直前にリストを閉める)ことでティップ部の移動距離を増やすことが出来る。
2.ラインスピード

運動エネルギーについては『第四章 キャスティングをパワーアップするべし』で解説した通りラインスピードを上げる事で増やす事が出来ます。遠くまでラインを運ぶためには重力に負けないだけの水平方向への運動エネルギーが必要になりますから、フライラインに出来るだけパワーを乗せてあげる必要があります。その方法としてcheck一つはフライラインにかかる慣性モーメントを増やしてあげる事です。これはロッドの復元力を増してあげる事で可能になります。具体的にはロッドを出来るだけ曲げてやる事で復元力は増加します。checkもう一つの方法ははフライラインのスピードを上げる事でフライラインの運動エネルギーを増やしてやる事です。すなわちパワーのあるループとは運動エネルギーの大きなラインループの事です。

A.ロッドを曲げると言うこと

ロッドの曲がりが大きくなれば復元力が増す事から、ロッドの復元時にフライラインに加わる慣性モーメントが大きくなり結果としてラインには大きな運動エネルギーが加わる事になります。ロッドを良く曲げるためには、水平移動時のリストワーク(急激なリストダウンなど)や肘の移動などの動きを加える事で実現する事が出来ます。ただし必要以上にロッドを曲げようとして無理な力を入れるとロッドティップの軌跡にゆがみが出たり<Fig2.参照>この方ロッドの急加速、急停止を起こしやすく、急激なリストダウンを伴うのでそのタイミングでのバイブレーションなどが発生しやすくなるとともにラインの直進性に対しても影響が出やすくなります。急激なリストダウンはナイフエッジ型のループを生成する事になります。このループは、見た目にはパワーがありそうに見えるのですが本質はちょっと違います。ナイフエッジ型のループは急激なリストダウン等により、直進するフライラインがが手元下方に引かれる事により出来ます。ラインが手元下方に引かれると言う事はループの先端を中心にしてフライは後方上空から前方下方に引かれる事を意味する訳で、前方への運動エネルギーが分散する事になります。これは結果としてパワーロスに繋がってしまいます。checkロッドの曲がりに関して言えば、ロッドの持つ固有のベンディングカーブが一番ストレスの少ない曲がり方だと言えるでしょう。それはラインの荷重により自然に発生するものでありそれ以上の力を加える事は、結果としてトラブルの原因を作る事に他なら無いのです。

急激なリストダウン

B.ラインスピードを上げる

フライラインの運動エネルギーを増加させるための有効な手段として、ラインスピードを上げる事は特に大きな要素となります。ラインスピードと言うのは、ラインが放出される時の初速の事を言いますので、決してロッドを早く振ったからラインスピードが上がると言う事ではありません。ラインスピードを上げる方法は『第四章 キャスティングをパワーアップするべし』に記述したとおり、ラインのホールを行う事で実現出来ます。既にご存知のダブルホールテクニックが大きく役立ちます。check様はロッドを曲げる事とラインスピードを上げる事、この二つの課題を克服すれば、遠投能力は飛躍的に向上すると言う訳です。実はこの二つの課題は相反する要素を含んでいます。それは次のダブルホールの解説に記します。

3.効果的なダブルホールのタイミング

フライラインの運動エネルギーを増加させるための有効な手段としてラインスピードを上げる事を挙げましたがその方法としてダブルホールと言うテクニックがあります。この方法によりフライラインの直進性もはるかに向上する事から、遠投には必要不可欠な技術です。ダブルホールを行う上で重要なのはホールのタイミングです。一般的にビギナーの方が行っているのがロッドハンドの移動に合わせた4拍子のホールです。これはロッドが移動を開始するのと同時にホールを開始するものです。バックキャスト・フォワードキャストとも2拍子、すなわち一回のフォルスキャストを4拍子で行う物です。特にこれが悪いと言う事ではありませんがもう少し効率の良いホールについて考えてみましょう。ホールによるキャスティングの効果はラインスピードを上げる事が一番の目的ですが副次効果として次の二つが挙げられます。実はこの副次効果が大変重要なのです。実はこの二つは相反する運動になのですがそれは後ほど。

  1. 1.ロッドを曲げる事による復元力の増加
  2. 2.ロッドハンドの疲労軽減

上記1.のロッドを曲げる事による復元力の効果については4拍子のダブルホールを行うと感じる事が出来ると思いますが、バックキャストのスタートと同時にホールを始めるとフライラインはストリッピングガイドを支点にして引っ張られる事になります。どれほど優秀なガイドであってもそこで摩擦が生じる為、厳密にはホールのパワーがガイドを通じてロッドに分散する事になりそれがロッドを曲げる力にもなります。しかし力が分散すると言う事はホールのパワーが全てフライラインの加速には使われてはいないと言う事になります。当然この力はロッドハンドにも加わる事になり、キャスティングを繰り返す事でロッドハンドへの負荷となるので、特に高番手のロッドになるほど振り続けるのが苦痛になってきます。それに対して上記2.のロッドハンドの疲労軽減は上記1のデメリットを克服する事で実現できます。ホールの時に摩擦が無い状態であればホールのパワーは全てラインの移動に使われる事になるのでロッドハンドに対するホールによる負荷は無くなると言う理屈になります。では、摩擦が無い状態と言うのはどう言う状態か考えてみましょう。ストリッピングガイドを含めてガイドにもロッドにもラインが触れない状態の時です。実はこの瞬間になるべく近いタイミングでホールしてあげようと言うのが一歩進んだダブルホールの解説になります。実際そのような瞬間があるかどうかは別としてcheck理論的にはロッドが最大に曲がった時からホールを開始し、ロッドが復元し真っ直ぐになった時(ラインがループを形成するその瞬間)にリリースします。その瞬間にリリースすればホールのパワーが無駄なくラインの移動に使われる事になります。

さて、このユニットではフライを遠投するためのメカニズムの基本としてラインループとラインスピードについて学習しました。次回は、ダブルホールのタイミングについて実習で確認してみましょう。