4月21日 入遠野川釣行

 愛車と最後の釣行へ

遠野オートキャンプ場
入遠野川沿いにある「いわき市入遠野オートキャンプ場」で遊漁券が買えます。キャンプ&フィッシングに最適
かぽか陽気の日曜日、今朝は風も無いし予定も無いし(笑)ちょっとの時間釣りに行ってくることにしよう。パジャマのままで庭に出て突然だけどそう決めた。訳あって、車を乗り換えることになり、予定では金曜日に運ばれていたはずなのだが、陸送屋の都合で引き取りが月曜日に変更され、本当なら今日はあるはずのない愛車がまだ庭に居るのだ。すでに空っぽにしていた車に釣り道具をまた詰め込むと家を出た。家を出るには出たものの行く先が決まらない、会津に行くにはもう時間が遅いし今年初めての夏井川にでもしようかと遊漁券を買いに某GSに立ち寄った、痩せて気の弱そうな店員さんに「遊漁券あります?」と尋ねると、痩せた頬をなお一層細くして「あー、すみません、去年までは置いてたんですけど今年から止めたんですよ・・・駅前の○○本店さんで扱ってますから」とかすれるような声で答えた。そんなに恐縮されるほどの問いかけをした訳でもないのだがかえってこちらの方が恐縮してお礼を言って駅前に向かった。 ○○本店は、○○旅館と併設して駅の真ん前にある。一族の経営なのだろう、もしかすると同じ経営者なのかもしれない。まあそんなことはどうでもよいのだが、残念なことに「本日定休日」の札が下がっていた。何と言う不幸な日だろう、もう遊漁券売り場を探すのも面倒なので前回に行った入遠野川に行く先を変更した。

遠野オートキャンプ場
入遠野川沿いにある「いわき市入遠野オートキャンプ場」で遊漁券が買えます。キャンプ&フィッシングに最適

遠野川はいわき市の南、植田町、錦町を分けて太平洋に流れる鮫川の支流である若かりし頃に住んでいたこともあって、鮫川流域は当時の僕のメインフィールドであった。最近はC&R区間が設置されたり釣り雑誌等に紹介されたりして鮫川流域でも一番の有名河川になっている。郡山方面から国道49号線を南下し三坂地区から国道349号線に右折するとすぐ左から県道20号線が合流する。この県道20号線に入り山間の細い道を南下するとやがて入遠野川の最上流部に出る。この辺りは人家も少なく遊漁券売り場も無いのでさらに峠を下ると入遠野川のメイン釣り場に至る。その手前の細い道を右に入ると「遠野オートキャンプ場」があり管理棟で遊漁券を求めることが出来る。上流側からアクセスする人はここで遊漁券を入手するのが良いだろう。遊漁券を購入し僕はメインの釣り場を外して上流に戻った。戻るとすぐに入遠野川沿いに左に下る道がある、その先の久保目集落を過ぎ林道に入ると砂防堰堤があって昔はその対岸でサクラマスクラスの大ヤマメがライズしていたものだ、その上流は林道沿いにいわきでは数少ないイワナの生息域になっていて僕らを楽しませてくれたものだった。数年前に車で行こうとしたが残念ながら僕の車が入っていけるような状況では無かった。歩いて入る勇気があれば面白いかもしれない、責任は持てないけど(笑)

入遠野川
二輪草の可憐な花が色気の無い春の渓をささやかに彩る。私のお気に入りの風景なのです。

入遠野川
二輪草の可憐な花が色気の無い春の渓をささやかに彩る。私のお気に入りの風景なのです。
日は暫く入ったことのない区間に入ってみようと思う、橋の傍の空き地に車を入れようと橋を渡った時カーブの向こうから猛スピードの車が顔を出した。急ブレーキをかけた僕の車のノーズがいったん沈んで置きあがった時、対向車の兄ちゃんの顔が見えた。目を丸くし口パクで確かにこう言った。「あぶねえなあ、全く・・・」いや、確かに危ないさ、この狭い道に僕のFJクルーザーじゃ道幅の半分以上とっちゃうからね、ただそれより危ないのはお前のスピードだよ、「こんな狭い道の見通しの悪いカーブをそんなスピードで突っ込んでくるんじゃねえつうの」、思わず声が出かったけれど、そこは大人の僕、さらっと流し目をくれてすれ違い、橋の脇の空きスペースに車を停めた。釣り支度を始めるとその兄ちゃんも車を停めて橋の上から川を覗く、僕が居るのでまさか入ることは無いだろうが、あきらめて別の区間に移動するかと思いきや、そのまま下流の行き止まりに車を停めた。ここから上流暫くの間は釣りにならないので、僕は下流に下って入渓するつもりだった。ちょっとだけイラっとしたがこんなところで喧嘩してもしょうがないので更に上流に移動、結局、先週入った区間を釣る羽目になった。渓流に続く道は狭く険しい道が多いしシーズン中は自分以外の釣り人も多いのだということを肝に銘じて走行するようにしようと思うのである。

入遠野川のヤマメ
素敵なジャンプシーンを見せてくれたヤマメ、木っ葉ヤマメの渓だが居るところには居る

入遠野川のヤマメ
素敵なジャンプシーンを見せてくれたヤマメ、木っ葉ヤマメの渓だが居るところには居る
つもの場所から川に降りた、もうお昼になるので流石に釣り人の姿は無いが、日曜日と言うこともあってか、これ見よがしに付けられた真新しい足跡が目に突き刺さる。これじゃあ今日はダメかと思ったのだが、想像した以上にヤマメの活性は高くスレては居るものの小気味良いタイミングで顔を出すのだ。ところが、ヤマメの活性に反するように僕の活性が上がらない、プレゼンテーション後にちょいとよそ見をした瞬間にヤマメが顔を出す、何かの気配を感じて振り返った瞬間にヤマメが宙を舞う、そんなこんなで4匹のヤマメに弄ばれるという前代未聞の釣りになってきた。しかも最後にアワセ損ねたヤマメはこの川にしたら珍しいくらいの良いサイズだった。これはマズイ、このままではろくな釣りにならない、深呼吸をして心を落ち着かせて仕切り直しだ。集中力を取り戻した僕のフライに喰いつくヤマメたちは相変わらずのチビヤマメなのだがそれでもなかなか元気が良い、暫くの間チビヤマメと遊びながら釣り上がるとちょっとした深場のポイントに着く、この流域にしたら珍しく水量のある場所なので魚が居ないはずは無いのだが釣れたためしが無いポイントなのである。遊び半分にちょっとだけロングキャストしてみた、フライは渕尻を超え、右岸の大岩が作る変化した流れを超え、落ち込みから狭められて大岩に当たる流れの流心に落ちた。ちょっとだけフライが流れたその瞬間の飛沫が上がってフライが宙を舞った、「あら、いたんじゃないの」、同じ場所に何度かフライを落とすものの当然のように反応は無い、まあそれほどのサイズじゃないし先に進もうと思ったのだが、ちょっと落ち込みの辺りが気になって何気なくフライを落としてみた。とたんに水飛沫が上がりフライを咥えたヤマメはプールを縦横無尽に走り回った。今期初めて位の良いサイズのヤマメとのやり取りが最近忘れていたとある事を思い出させてくれた。その昔の僕の口癖は「一番良いポイントに最初のフライを落とせ」だった。これは一番良いポイントに一番良い魚がいるので、周りから攻めるのでは無く最初からそこを狙えと、周りの小魚を先に釣ると肝心の魚が消えてしまうからと言う意味なのだが、プールのライズを捕る釣りになれてしまうとどうしても広範囲にフライを落としたくなる、無意識にフライを散らしてしまうのだ。けれど瀬尻や渕尻に良型が出るのは朝夕の一時で、あとは身を隠せる場所に潜むって言うのがあたりまえ、こんな小渓なら尚更である。「だよな、アホだな俺」と独り言が口をついた、今年は大物が釣れるぞ、いや多分釣れるんじゃないか・・・な。

入遠野川のポイント
右岸の大石の白泡の切れ目が狙うポイント、倒木が作る三角形の間をクリアする

入遠野川のポイント
右岸の大石の白泡の切れ目が狙うポイント、倒木が作る三角形の間をクリアする
がて、いつも脱渓場所にしているポイントに着く、ここも流れが大石に当たって深いプールを作り出していて、そのプールは長い渕尻を持つ、今度は先の教訓を生かし、渕尻を捨てて落ち込みの白泡が消えるあたりに最初のフライを落としてやろうと決めたのだが、そこには潜むヤマメを守るように、まるで人工的に作られたような倒木が右岸から斜めに水中に突き刺さっている、僕は渕尻の木っ葉ヤマメを散らさないように注意しながら立ち位置を決めた。そしてロッドティップを立てたままループをロッドティップの外側に作るとロッドグリップのあたりの高さにサイドループを作った。ラインベリーの下側から解けたループが倒木の作る三角形の中をすり抜けて狙い通りに白泡の切れ目にフライを運んだ時、今日最後のヤマメがフライを咥えた、静かに左手のラインを引くと右手に重量を感じたと思った瞬間、水面を割って派手なジャンプを見せた。先のヤマメよりも一回り大きく艶やかな衣をまとった美しいヤマメだった。「一番良いポイントに最初のフライを落とせ!」である。もしかしたら愛車との最後の釣行を見送ってくれたのかもしれない、何時に無くたくさんのヤマメたちが遊んでくれた、愛車の話はまたどこかで話そうと思っている。